マニラで生きる実在のストリートチルドレンたちが、貧しくも優しさにあふれた日常生活を演じる家族の物語。
ドキュメンタリー映画『ハルコ』(2004) で母と子を描いた野澤和之監督の劇映画第一回監督作品。
21世紀のネオリアリズム映画の誕生。

子供と家族の、愛の物語『マリアのへそ』。

2004年、在日朝鮮人女性の壮絶な人生を描いたドキュメンタリー映画『ハルコ』の野澤和之監督が、今度は、フィリピンのマニラの路上で実際に生活する子供たちを主人公に起用して、優しさあふれるヒューマンストーリー・ムービーを誕生させました。
アジア各地のストリートチルドレンを目の当たりに見てきた野澤監督、構想10年の作品です。
マニラのストリートチルドレンを描くことで、日本の人々、子供たちに元気と希望を与えたい、これが監督の願いです。

登場する子供たちはすべて実在のストリートチルドレンたち。

道路での画像 この作品の子供たちは、すべて本物の路上生活者か、以前そうした生活をしていた子供たち。学校へも行けず、文字も十分に読めない子供たちです。
映画は、オーディションで選ばれた3人が兄妹役となり、大都市マニラの片隅で生活する姿をリアルに、そして静かに優しく描いていきます。
スモッグに霞む青い空、灼熱の太陽、スコール前の黒い雲、澱んで流れる町の川、喧噪あふれる市場、車の大渋滞、排気ガス、高層ビルをシルエットにして沈んでいく夕日……
そんな大都市の片隅、道端の彼らの住処。
新聞を脇に抱えて売り、物乞いをして得たわずかな収入を元に暮らすストリートチルドレンたちの日常生活。
それでも彼らには微笑みがあり、優しさがあり、家族の温かさが確かに存在している。
マニラの都市の裏通り、貧しい人々が生活する街、生活感溢れる市場の喧噪、路上の住処の夜の闇、澱んだ川の水面に浮かび上がる街の灯り……グリーンとブルーを意識してこの作品の世界を創り上げたカメラマンは、野澤監督とドキュメンタリー作品で仕事を共にしている堂本昌宏。
16:9のワイド画面に、フィリピンの大都市と田舎の風景の中で生きる人々の生き様が静かに切り取られていきます。

ストリートチルドレンたちを見守る一人の高校教師。

教師の画像 子供たちや路上で生活する家族を無償で助ける一人の教師。
毎日彼らが生活する路上を歩き回り、話を聞き、食べ物を与え、何かがあれば相談に乗る生活。
実は彼も又、現実生活そのものが、映画の役柄そのまま、映画の中で自らの自分を演じている。


悲しい映画はもう観たくない。

この映画はリアリティあふれる描写により、まるでドキュメンタリー映画のようだが、あくまでフィクションの劇映画。しかし、子供たちの表情や仕草は生き生きしており、そこに彼らの計り知れないエネルギーを感じないわけにはいかない。
低予算のため、少ないスタッフによる2カ月間のオールロケの撮影は困難を極めたが、子供たちの明るい笑顔にはずいぶん元気づけられたと監督は語っています。
マニラの子どもたちに限らず、世界の恵まれない子どもたちを描いた映画やドキュメンタリー作品は沢山ありますが、監督がこだわったのは「子どもたちには必ず明るい未来があるはずだ」というメッセージを送ること。 「希望がもてる映画を創りたい」それが監督の願いなのです。

多くの人々の賛同を得て。

この作品は、約500人の映画製作賛同者の支援のもとに完成いたしました。
野澤監督の映画製作企画の趣旨に、(株)高齢社代表の上田研二氏が賛同していただき、プロデューサーをかってでて下さいました。
おかげさまでその後、多くの人々のご賛同をいただき、ここにそのご協賛により映画を完成させることができました。
この映画は、そのような方々の子供たちに対する暖かな願いの結晶です。
この誌面をお借りして、もう一度、映画製作を支援していただきました方々に厚く御礼申し上げます。


脚本・監督:野澤和之 プロデューサー:上田研ニ 制作プロデューサー:細谷義久 撮影監督:堂本昌 撮影技術・録音:山田尚弥 音楽プロデューサー:合田享生 演奏・アコーディオン:福浦道子 バイオリン:鎌田侑里 笛:畑田祐ニ 作曲:渡辺義純 編曲:大川友章 音響効果:片野正美 編集:石原肇 美術協力:野澤富好,今井由江 英語翻訳監修:佐藤和子,三木弓彦 タガログ語監修:ローズリン・ハカバン 制作:酒井富久栄,マイク・カバルド,志村郁子,早野香織 日比コーディネーショ:山口勝己,エイリーン・ザバラ,ママート・マヌス 製作スーパーバイザー:禿正典
2007年/日本映画/カラー/DV/16:9/タガログ語(日本語字幕版/英語字幕版/ステレオ/106分/製作:©2007年「マリアのへそ」製作委員会
製作:©2007年「マリアのへそ」製作委員会